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ハンガリーから発信中

世の中はおもしろい出来事であふれている

大手予備校の採用試験で試験官に激怒された話

 

フランスに大学3年の後期から4年の前期、具体的には5月まで留学していたので僕の就職活動は帰国後、大学4年生の6月から始まった。

それまでなんの準備もしていなかったので、就活生であれば大学4年の6月から準備を始め、就活をスタートするのがいかに遅いのかはわかるはずだ。

 

しかし、不思議と焦っていなかった僕はとりあえず狙いを興味があった教育関係に絞り、その中でも塾関係を受けてみることにした。理由は、塾の先生という仕事に興味があったからだ。

塾関係の仕事に絞ったあとはネットの就活サイトで塾や予備校の求人を探し、よさそうなものを見つけては説明会や面接を申し込んだ。

 

申し込んだ中の1つだった大手予備校からさっそく連絡がきた。

この予備校ではまず模擬授業を受験者が行い、それに合格すれば面接にいけるという採用試験システムがあり、僕はそのシステムで受けることにした。

 

試験当日、会場に着くと受験者は僕と男性就活生が2人と女性就活生が2人だった。あとで知ったのだが、このシステムは都内在住ではなく遠方から来る人が対象だったようで、名古屋の大学に通っていた僕は遠方扱いになり予備校側が僕にこのシステムを提案してくれたのだった。

 

試験官は若い男性だった。僕を含めた5人の前でこの予備校が目指すものや授業のやり方などをこの試験官が熱く語った。

 

そして、さっそく模擬授業へ。科目は英語で時間は5分程度。中学生を対象に、比較の文法について説明するというものだった。

 

ちなみに、模擬授業の試験といっても1回やってダメであってもそのあとに試験官からされるアドバイスを取り入れ、もう1回チャレンジし、それでOKであれば次の面接にいけるというものだった。模擬授業試験が始まる前にこの説明を試験官がした段階から僕はなにか違和感を感じていた。

 

模擬授業試験1回目がスタート。それぞれの受験者が模擬授業をやるも僕を含め合格者は0人。試験官がそれぞれにアドバイスをし2回目に臨みことになった。アドバイスは声の大きさや板書の仕方、話し方、この予備校の理念を取り入れて授業を進めるといったものなどだった。

 

各々、試験官のアドバイスをかみしめながら自分の授業のやり方を見つめなおしていた。そんな中、僕の違和感はさらに大きくなっていた。

 

模擬授業試験、2回目がスタート。僕を除いた4人の受験者は試験官のアドバイスを着実に実行し試験官が望む授業をやった。しかし、合格はまだもらえず3回目に臨むことになった。

 

一方、この試験方法への違和感がますます大きくなっていた僕は試験官のアドバイスのうち納得できた部分は採用し納得できなかった部分は取り入れずに授業を改善し2回目に臨んだものの不合格。試験官から「俺のアドバイス聞いていたか?」と軽く怒られ同じく3回目に臨むことになった。

 

3回目がスタート。4人の受験者は合格した。しかし、その光景は異様なものだった。1回目の模擬授業では4人がそれぞれ個性的な授業を展開した。それらは完璧なものではなかったが、それぞれの授業に魅力があった。しかし、3回目の授業ではこれらの個性は消え、4人がほぼ同じ授業を行った。

 

その‟画一化”に違和感を抱いていたのだと僕は初めて理解した。

 

3回目の模擬授業でも不合格だった僕を試験官は別室に呼び出した。

そしてこう問うた。

 

「君はこの予備校の授業をどう認識してるんだ?」

 

それに対して僕はこう答えた。

 

「ロボットみたいな授業だと思いました。みんなが同じ授業を同じように行う、まさにここはロボット製造工場ですね」

 

その瞬間、試験官の目つきが変わり僕に詰め寄り

 

「俺らはロボットをつくっていねえ」

 

と激怒した。

 

 結局、僕は4回目の模擬授業を辞退し、試験会場を後にした。

 

去り際この試験官が僕に「就活口コミサイトにはこのことは書かないでね」と約束させた。

 

‟画一化”が悪いとは思わない。

大手予備校であれば、生徒数も多く先生が生徒の成績をあげられなければ予備校の信用に直結する。

したがって、新米講師に自己流の授業をさせるよりは会社のマニュアル通りに授業を指せ、ベテランになるにつれて自分の色を出させていくのは至極当たり前のことだ。

そして、それが大手予備校の世界なのかもしれない。

 

それに対して僕は違和感を覚え、受け入れることができなかっただけの話である。

 

別室でこの試験官との面談で彼の言った一言を今でも覚えている。

「会社が自分に合わせるのではなく、会社に自分が合わせるんだ」

 

確かに、なにもかも突っぱねていては会社という巨大な組織の中で生き残っていくことは難しい。しかし、だからといってすべて会社に合わせるというのはいいとは決して思わない。

 

 逆にいえば、この試験官のように会社に従順になれる人間が大手予備校の仕事には向いているんだろう。

 

ちなみに、これが就活1発目だった当時の僕はそれなりにメンタルをやられ帰り道に海老原嗣生さんの『なぜ7割のエントリーシートは読まずに捨てられるか?人気企業の「手口」を知れば、就活の悩みは9割なくなる』を買って読んだことは今ではいい思い出である。