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世の中はおもしろい出来事であふれている

タイトル(仮)7

7.

 青年はカンナの腕をつかんだまま走り出した。カンナはわけがわからなかったが、警察に連れて行かれるよりはこの得体の知れないロボットのような男に連れて行かれるほうがはるかにマシだと思い、青年のスピードに遅れないようにと一生懸命走った。

 丁字路に差し掛かり、右に曲がるとそこには大きな門がありその奥には蔦が絡まってる古い洋館のような建物があった。カンナはあの丁字路を何回か通ったことはあったがいつも左に曲がっていたため、こんな立派な門や洋館があったとは知らなかった。

 青年は門の扉を押した。重そうな鉄の扉はギィーと鈍い音をたてながらゆっくりと開いた。青年はカンナの腕をひっぱり門の中に彼女を押し込み、自らも扉の中に滑り込ませてから扉を引っ張って閉めた。

 「あの、あなたはいったいどこの誰なんですか?先日、うちの畑に倒れていましたよね?」

 カンナは門の前で気になっていたことを矢継ぎ早に聞いたが、青年は黙ったままだった。 

 「外国の方ではないですよね?私のことをお姉ちゃんって呼んでましたし」

 カンナは青年の顔を覗き込みながら別の質問をぶつけた。

 「ひとまずあの建物の中に一緒に来てもらえますか?話はそこでしますので」

 やっと口を開いた青年はそういいながら再びカンナの腕をつかみ、小走りで建物のほうにむかった。建物は近くで見れば見るほど不気味な雰囲気を醸し出していた。その古さや蔦だけが原因ではない。屋根の四隅に立っている4体のガーゴイルの像はその不気味さにさらに拍車をかけていた。

 青年は洋館の扉を押し開け、カンナを中に連れ込んだ。中はすでにシャンデリアの明かりで満たされていたが、掃除がほとんどされていないせいで埃まみれだった。

 カンナは彼に引っ張られるまま建物の奥に進み、やがて突き当たりにある部屋の中に入った。そこは大きな机とイスが2つしかないシンプルな部屋だった。

 部屋のドアを閉めると、青年はカンナのほうを向き、彼女の目を見つめ口を開いた。

 「あなたのお母様は殺されました。申し訳ありません。お守りすることが出来ませんでした」

 突然の報告に彼女はこの男が何を言っているのか全く理解できなかった。それどころか、この男が悪い冗談を言っているとさえ思い、変な冗談はやめてくださいと彼の頬を叩いた。

 「冗談ではありません。あなたのお母様、コルフィー・ジョセフィーヌ様は殺されました」

 それはまぎれもなくカンナの母親の名前だった。なぜこの見ず知らずの男が自分の母親の名前を知っているのか、そしてなぜ母親は殺されたのか、なによりもこの男はいったい誰なのか。カンナの頭の中は混乱していた。

 それを察知してか男はカンナの疑問にゆっくりとしかし力強い口調で答えていった。

 「わたくしはポラリスと申します。空の国の軍人です。そして、あなたのお母様、ジョセフィーヌ様は空の国の王であったモルゴン3世の妹です」