ロシア語と出会ったのは大学に入学してわりとすぐのことだった。お互いの言語を教えあういわゆる言語交換サイトで日本や日本語に興味を持っているロシア人の女性と知り合ったのがきっかけだった。
彼女は僕よりも3歳年上で、大学を卒業し、プロのカメラマンとしてフリーで働いてるとのことだった。
彼女は英語が話せたので、僕らは英語でチャットをして仲を深めていった。
彼女は日本語を勉強したいようだが、なにから始めたらいいかわからないという状況だったので、僕は彼女に日本語のあいさつや簡単な文章を教えた。
一方、彼女もロシア語を教えてあげるといってくれたが、その時はフランス語と英語で手いっぱいだったので断ってしまった。それにその時は英語で話せるからわざわざロシア語を勉強する必要ないと思っていたし、ロシアにもロシア語にも興味がなかった。
それから1年が経ち、大学2年生になった。相変わらず彼女とは毎日英語でチャットをしていた。そんな大学2年生のある日、ふとロシア語を勉強してみたいと思うようになった。
それは英語、フランス語と外国語を始めた僕が抱いたある感情からくる思いだった。
その感情とは、外国人と話すときはその人の母国語か自分の母国語である日本語で話したいというものだ。
英語は確かに役に立つ。今日、多くの人が話せるので英語が話せれば世界中の人と話すことができる。しかし、言語は英語だけではない。日本語もあるし、フランス語やイタリア語、ロシア語などたくさんの言語がある。
僕はたとえばフランス人と話すときはフランス語か日本語で話す。
また、たとえばスペイン人と話すときは、僕はスペイン語ができないのでスペイン語では話せないが、相手が日本語を話せれば日本語で話す。お互いが互いの言語を話せないときは最終手段として英語で話す。
1年間、2つの外国語に触れた結果抱いた感情だった。
そして、それから僕は彼女にお願いしてロシア語を教えてもらいつつ、自分でも参考書を1冊買ってロシア語を始めた。
ロシア語は想像以上に難しかった。
まず、文字が違う。
フランス語やイタリア語、英語はローマ文字で日本人には見慣れたものだが、ロシア語はキリル文字という独特の文字を使う。
ロシア語を習得するためにはキリル文字の習得が必須だった。
僕の覚え方は極めて古典的である。それは、ひたすら書いて覚えるというものだ。
英単語でも構文でもとにかくなんでも書いて、書いたものを読んで、書きながら読んで覚える。キリル文字もなんども書いた。書いて書いて書きまくった。
そんな古典的な努力のかいもあってなんとかキリル文字を習得。これでやっとロシア語学習のスタートラインに立った。
次の壁は文法だった。