マンツーマンレッスンを快く引き受けてくれたロシア語の先生はとにかくテンションが高かった。彼女は40代後半で背が高く、関西弁が混じった日本語を流暢に話す。レッスンは毎週月曜日の10時から11時の1時間でテキストは僕が持ち込んだ市販のものを使うことになった。
レッスン初日、早くも僕のロシア語の自主学習のボロが出始めた。
先生に、キリル文字を読めるか確認すると言われ先生が指さす単語を読むことになったのだが、すらすら読めないのである。
緊張していたわけではない。
キリル文字を習得したように感じていたのは自己満足で実際はしっかりと習得できていなかったのである。結局、マンツーマンレッスンはキリル文字の習得からスタートすることになった。
先生のレッスンは楽しかった。最初にロシア語でのフリートークをやり、次に文法の時間、最後にテキストを読む時間になった。
ロシア語のフリートークは初心者には難しい。それでも語学力を向上させるためにはもってこいの方法である。
ロシア語にもフランス語やイタリア語と同様に日本人にとって発音しにくい単語がある。先生はフリートークで丁寧に僕の発音を直してくれた。文法も聞き心地のいい関西弁交じりの日本語で1つ1つテンポよく、でも丁寧に説明してくれた。
僕のロシア語への学習熱はさらに燃え上がった。
そんな状態が3か月過ぎた。
僕のロシア語は自分でも驚くほど上達した。まず、キリル文字がほとんど完璧にすらすら読めるようになったのである。そして、フリートークでも最初のころと比べると明らかにロシア語をしゃべれるようになったのである。
先生は僕の成長を自分のことのように喜んでくれた。僕はそんな先生をさらに喜ばせたく、ロシア語検定の受験を考えるようになったのであった。