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2日目 父とハンガリー

 

両親に会うのは実に2年ぶりだ。2年前は僕が免許の更新のために日本に帰り再会した。あれから2年。昨日、空港で久しぶりに見る両親の顔は変わっていなかった。ただ、少し照れくさかった。

 

彼女と待ち合わせ場所のホテルのロビーに時間通りに到着する。2人ともぐっすり眠れたようだ。今日はまず国会議事堂の中を見学する。ブダペストの観光スポットで最も人気のあるスポットだ。残念ながら日本語のガイドはなかったので英語のガイドを予約した。ただ、母は英語を鍛えることができるのでうれしそうだった。

 

2人ともよく眠れたが時差ぼけのためなのか早く寝たためなのか朝4時ごろに目が覚めたようで時間をつぶすためにホテルの周辺を2人で散策したらしい。近くには昔ながらの大きな駅がある。日本のCM撮影にもたまに使われる。中に入ると大きな掲示板があり電車の発着時間を知らせてくれる。時間がわかると"パタパタ"と音を立てて、時間が表示される。この掲示板は電子掲示板ではない。父はこの昔ながらの駅と電車がひどく気に入ったらしくたくさんの写真を撮っていた。そして、滞在中毎日この駅に行っては写真を撮っていた。

 

ただ、スマホの操作になれていない父が撮った写真はぶれていたり、指がはいっていたり、焦点があっていないものがほとんどだった。これはこれできっといい思い出になるのだろう。写真だけが思い出を残すための手段ではない。実際に自分の目に焼き付けたものは写真以上の思い出になる。

 

国会議事堂に早く着きすぎたので、近くにあるバシリカを見学した。それとスーパーにも寄った。両親はハンガリーのスーパーがかなり興味深かったようでいろいろな商品を見ていた。また、パン職人の父はスーパーで売られているパンに釘付けになっていた。ハンガリーのパンの中で"キーフリ"という三日月形のパンがある。もちもちしておいしい。値段も5円程度である。このパンを2人に勧めると2人とも気に入ったようで「おいしい」と言っていた。

 

国会議事堂の見学も無事に終わった。母は英語ガイドの英語が速くてあまりわからなかったようでリスニング力を鍛えなきゃダメだと痛感したらしい。母に「ドナウ川は英語ではドナウリバーとは言わない。英語ではDanubeという」と伝えると驚いていた。ちなみに、「ハンガリー」は英語では"Hungary"だがハンガリー語ではハンガリーとは言わないことにも驚いていた。

 

ディナークルーズまで時間があるのでお土産やさんが並ぶ通りを歩くことにした。道中、父が「温泉に行きたい」といった。ハンガリーはヨーロッパ1の温泉大国だ。ブダペストには多くの温泉がある。ただ、日本の温泉とは違う。日本では男女別で裸で入り、ゆったりとした時間を過ごし心も身体もリフレッシュする。一方、ハンガリーの温泉は男女が水着を着て入り、みんなでわいわいして楽しむ。日本のナイトプールのようなイメージだ。なので、父がイメージしている温泉とは天と地のさであることを伝えたが父は言ってみたいと言い続けていた。そこで一番有名な温泉に行くことにした。ロビーには多くの若者がいてにぎわっている。明らかに日本の温泉とは違う。水着着用が義務なのだが、水着を持っていない父はふんどしでもいいか係員に尋ねてくれないかと言ってきた。言われたとおり聞くと、鼻で笑われた。そんな客は門前払いである。

 

ディナークルーズの時間が迫ってきたので温泉をあとにし、船が出発する場所に向かう。雨が降り始め、強くなってきた。時間通りにつき、船に乗る。席は舞踊ショーが行われるステージのまん前だった。ショーはまだ始まっていなかったが、おじさんが木琴を弾いていた。続いてバイオリンを持ったおじさんが来た。彼は僕らを見るなり「日本人ですか?」と尋ねてきた。父はなんでわかるのか自身の胸に日本の国旗のピンバッジが光っているのを忘れ、不思議がっていた。

 

船が出港し、料理が運ばれてくる。おいしい料理に舌鼓を打っているとハンガリーの民族衣装をまとった女性がマイクを持って登場し、ハンガリーの民謡を歌い始めた。コンサートが好きな父は特に喜んでいた。

 

突然父が笑い始めた。隣の席にいた人の顔が志村けんに似ていると言い出した。相手にばれないように斜め前にいる志村を見ると確かに似ていた。親子3人で志村けんに似ている人を見て笑う。その光景を彼女は理解していなかった。志村けんの写真を見せ、斜め前の人物が似ていることを伝えると苦笑いしていた。ハンガリー人にはわかりづらい冗談のようだ。

 

料理もショーも終わり船は出港した場所を目指しゆっくりと進んでいた。クルーズももう終盤だ。船のデッキに出て写真を撮り、スタッフに渡されたアンケートに答える。僕も父も満点だったが母と彼女は料理をのせたお皿がところどころ割れているのに気づき、「お皿を変えるべきだ」とコメントを書いていて、減点していた。女性陣は手厳しい。

 

船が波止場に着いた。今日の予定は全部終了した。明日はウィーンに行く。両親の海外旅行も明日で折り返しの3日目だ。ウィーン行きのバスは朝早く出るので早めに集合することを伝え2人と別れた。